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おす、めすって?結構曖昧です [線虫]

さて、線虫では数件、追加のお話が必要でしょう。


一つは、性についてはなはだ寛容であることです。

ヒルと呼ばれてますが・・・血は吸いませんょ」でワムシさんには、
メスのみのグループが存在することをお話しましたが、線虫はもっと変わっています。

Caenorhabditis elegansという種類の自由生活をする線虫がいるのですが、
この種類は、雌雄同体で自分の精子を使って、自身の卵を受精させ子孫を残します。

ここまででも十分変わっているのですが、
さらに、生まれた子供のごく少数にオスがいて、その個体は、
雌雄同体個体を優先的に受精させることが出来るそうです。

ここまでいくとどれが、オスか、メスかという定義すら怪しくなってきてしまいますが、
線虫ではそういった仲間が数多く存在します。
Genetics. 2010 Nov;186(3):997-1012.が詳しいでしょうか。

ちなみに全ての種が、雌雄同体というわけではなく、
当然、雌雄異体でオス、メスのある種類も混在しています。
その辺のことは、遺伝子レベルまで解明されていて、tra-1など複数の遺伝子が、
Curr Top Dev Biol. 2008;83:41-64.で詳しく述べられていますね。


二つ目は、その精子の形状です。

その精子は、他の生物にあるべきはずの鞭毛を持たず、アメーバーのごとくずるずると移動するのです。
何もかにも、常識はずれ(どこが常識なのかは視点の違いにすぎませんが)なのですが、
まあ、そういった生物もあるということなのでしょう。
回虫精子.png
上図のような精子が核をひきずる形で、移動していきます。
駆動原理はというと、心棒となる繊維が形成され、細胞膜がキャタピラーのように動いていくようです。
この際形成される繊維は「アメーバというのは・・・運動の仕方のこと?」でお話したアメーバのものとは異なり、
ワイヤーロープ状の、撚りが二重になった形状をしたタンパク質(MSP:major sperm protein)とのことです。
Journal of Cell Science 115, 367-384 (2002).にアメーバー様精子の移動の仕方が、
Journal of Cell Science 107, 2941-2949.に繊維の形状が、解説されていますね。

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コメント 2

ligia

センチュウの精子の形状は知りませんでした。
面白いですね!
by ligia (2015-01-19 16:09) 

dumbo

ligiaさま、こんにちは。
そうですね、さらにいろんな生物をひも解いていくと変わった事がわかります。
受精した細胞は分裂して、いろんな体の組織へと分化していきますが。
始原生殖細胞というものがかなり早い段階から作られます。
この細胞はなんと、アメーバ運動をして、卵巣や精巣の出来るだろう部分へと移動するのですね。
なので、アメーバー運動そのものが生殖細胞の真の動きかもしれません。
これは哺乳類、両生類でのお話です。
ところが、鳥類や爬虫類は、血液の中をどんぶらこっことのことで、うーん生命てとってもふしぎですねぇ。
Developmental Biology, 6th ed. Scott Gilbert Sinauer Associates, Incからのお話でした。
by dumbo (2015-01-19 17:14) 

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