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ペットの薬って安全?2 [ペット]

久しぶりにお薬の話でも。
dumboのメモでもありますからご興味の無い方はお休みしていてください。


暑い日が続きますね、
こんな日が長くなると、ノミ、ダニ・・・が気になってきますね。
今日はそんなお話です。


ノミダニは昆虫?もとい、節足動物ですから、やっつける?ためには殺虫剤を使うということになります。

最近は、沢山でてきていますね。
昔は首輪がメイン?だったのですが、
背中にたらすお薬とか、飲み薬とか、シャンプーとか色々です。


作用から分類すると、
①神経と筋肉を標的とするグループ
②成長と発育を標的とするグループ
③呼吸を標的とするグループ
④中腸を標的とするグループ
⑤作用点不明または多標的性阻害剤のグループ
などに分けられます。
これは、殺虫剤の作用機構分類(IRAC による)農薬工業会:JCPA (2014.10.20)が参考になるでしょう。


さて、殺虫剤は虫?に対するものですから、虫を殺傷する(弱らす)機能があるのは言うまでもありません。
しかし、それ以外の生物に有害では困りますから何らかの安全性?が保障されなければなりません。

まず死んでは困りますので、LD50(50%Lethal Dose )というものを算定します。
これは半数致死量というもので、その量を摂取すると半数が死に至るという数字(量)です。
この数字の量では50%の人、あるいは動物・・・が死に至りますので危険な数値というところです。
そこで、無有害作用量(No observable adverse effect level、NOAEL)というものもあります。
こちらは読んで字のごとくそれだけ摂取しても有害作用がない数字(量)ということですね。
無影響量(No observable effect level、NOEL)というのもあるのですがこれは有害無害にかかわらずなんら作用がない量という事です。

これから考えると殺虫剤では、
人やペットに対しては、無影響量、無有害作用量が「大丈夫な量=安全」としていいかと思われますがいかがでしょう?
(人やペットに対しての薬ではないので有益な作用は必要ありませんから、無影響が本当でしょうが)



神経と筋肉を標的とするグループ、をメインにお話しましょうか?
ほとんどの薬の有効成分がこちらですね。

蚊取り線香で有名なピレスロイド系成分がこの中に含まれます。
除虫菊を使った線香ですから、一番古いハーブというのでしょうか?
具体名称はピレトリン(ピレトラム?)で、化学的にはナトリウムチャネルに作用します。
多くの虫に有効で、ハエ成虫,蚊成虫,ゴキブリ,ノミ,トコジラミ(ナンキンムシ),イエダニ及びマダニなどです。
除虫菊エキス(総ピレトリン)10gが1000g中に入ったもの、max5gを1平方メートルに密閉すると上記の虫が殺傷可能とのことです。
急性経口毒性値ですが、ラット♂764mg/kg、♀519mg/kg(農薬工業会)です。
0.5g/kgとすると、60kgの人に換算して、0.5×60=30gで、単純計算で、30/5=6平方メートルの空気?を吸入すると死んでしまうかもしれません。
この濃度は燻蒸剤として使用する場合なので、通常のスプレーや、蚊取り線香程度ではこの濃度には達しないとおもいますが・・・

人でのデータを探したのですが、・・・類似の、ペルメトリンでのものがありました。
LDLo 2270 mg/kg (ヒト、男、経口)、(東京都生活文化局)で、LDLo=最小致死量です。
さすがに実験していないでしょうから、推定値?ですかね。
アー○●ッドには、10g含まれていますから、体重5kgの動物が丸ごと食べると死に至るかもしれません。

ちなみに、蚊については、
ピレトリン 0.223~1.0µg/fly、LD50です。(クラシエ製薬株式会社、スミスリンローションCTD)
ダニで、
ペルメトリン 0.045~1.9μg/c㎡、LD50(同上、ドライフィルム法)

でNOEL、NOAELはどうかと言いますと、
こちらはADI(Acceptable Daily Intake:一日摂取許容量)の方をよく目にしますので、
ADIから、NOAEL=ADI×100、の式で求めましょうか。(100は安全係数ですね)

ピレトリン ADI :0-0.04 mg/kg-体重(FAO/WHO,JMPR 1999)
ペルメトリン  ADI:0-0.05 mg/kg-体重 (FAO/WHO,JMPR 1999)
から、それぞれ
ピレトリン NOAEL?=0-4.0 mg/kg
ペルメトリン  NOAEL?=0-5.0 mg/kg
ですね。
意外と少ない量ですね。

ちなみに蚊取線香のピレトリン量は、60mg位で、(日本農芸化学会誌 Vol.18 (1942) No.4 P402-
404)す。
さらに余談ですが、6時間位で燃え尽きる様です・・・

うーん、NOAELの最低が0mg!とは、摂取してはいけないということでしょうか???
どうしてこう言うことが起こるのでしょう?
本来天然成分である、除虫菊でもです。


それは、神経と筋肉を標的としている、ということに鍵がありそうですね。
ピレスロイド系成分はナトリウムチャネルに作用することにより、神経を麻痺させますが、
このチャンネルは他の生物にも存在しているのです。
では、安全性を保証している部分は何なのでしょう?

まさにそれがカギというのが鍵で、昆虫(虫)に対しての作用と、動物(人を含めた哺乳類)に対しての作用力が違うということに他なりません。

よくたとえられるのが、カギと、カギ穴です。
レセプター_鍵.png
化学反応ですからまず、反応(≒結合)する必要があります。
なので、カギがはまらないということは効かないということで、薬として成り立ちません。=紫
がしかし、他の生物にははまる可能性があるので、そういう意味ではいいですね。

元のカギと全く同じという薬があります。=緑
この場合、カギを差し込むことも出来るし、回して開ける(≒反応)事も出来ます。
過剰に反応させるということですね。

カギ穴に、はまるけど回せない薬もあります。=青
元のカギを差し込む事が出来ないようにして、反応をストップさせるのです。
この鍵は巧妙ですね、
レセプター拮抗.gif
こんな感じにもとのガキを跳ね返してしまいます。
拮抗薬という言葉をご存知かと思いますが、これがそれにあたるでしょうか。
(元のカギと拮抗するということです)


さて、上のピレスロイド系成分の多くは過剰摂取すると中毒を起こします。
それは、虫のカギ穴と、人や動物のカギ穴が同じではないが、似通っているためです。

面白い報告があって、
それは、昆虫と哺乳類のGABA受容体(神経と筋肉を標的とするグループの殺虫剤の標的部位のひとつ)の構造の違いから、
結合する能力?をシュミレートしたものです。

これによると、ラットと、ハエ受容体には些細な構造の違いがあり、その微妙な違いから薬の効き目が異なるらしいのです。
日本農薬学会誌23, 344-348 (1998)、からです。


では、さらなる安全な薬はと・・・なると、
昆虫にあって、脊椎動物には存在しない受容体を標的にすればいいのではとなるわけです。
そんな都合いいものがと思ったらあるのですね、
代表的なものが、オクトパミン(OA)と、チラミン(TA)受容体です。

考えてみれば進化の過程で、
前口動物(無脊椎)、後口動物(脊椎)とかなり早い段階から分かれたのですから、
あって当然と言えば当然?なのでしょうか?


そこで、これに対するお薬をと探すと、あるのですね、
アミトラズというのがそれです。
このお薬はニキビダニという皮膚の中に寄生するダニにも効果がある殺虫剤です。
オクトパミン受容体に作用するので、哺乳類には作用しません。
がっ・・・

がっ、農薬としてかなり毒性が強いのです、
ラット経口毒性、LD50 雄 1600mg/kg、雌 2100mg/kgと、ピレトリンとたいして変わりがありません?
(ダニカット乳剤20安全データーシート)
皮膚刺激性も結構ありますのでお薬として使用するには・・・ですね。
(実際、日本では、人、動物用医薬品して存在していません)

受容体の話としては???とハテナばかりですが、薬としてはよくあることなのです。


と思っていたら、オクトパミン受容体は哺乳類にも存在し・・・マウス、ラットにおいてにおい物質に応答するらしいです。
Pharmacol Rev. 2009 Mar; 61(1): 1–8.からです。

もう一つのチラミンはオクトパミンの前躯物質であるらしく、さらに、
微量に哺乳類にもこれらの物質も存在しているようなので、昆虫だけに作用する薬としては成り立たないかもしれません。
比較生理生化学 Vol. 17 (2000) No. 3 P 146-154。からです。


やはり、こういった受容体は進化の早い段階で確立しているのでしょうか?
調べると、いろいろ他の作用として利用されている報告を目にしますし。
うーん、難しいですね。


加えて、dumbo自身も苦労しているところですが、
アレルギーといったことが起こる事です。
この場合予測することが困難ですからさらに状態を複雑化します。
嘔吐・下痢・唇や舌のしびれ・めまい・けいれんなど、アレルギーによって引き起こされる場合、
上のNOAEL、NOELといった量すら問題にはなりません。(量には関係ないということです)



最後になりますが、自然志向といった場合についても書き加えておきましょう。
自然志向と言えばハーブですから、ノミ、ダニに効果がありそうなものを探してみました。

(効果については、自己責任ということでお願いいたします。
どこの精油バイヤーさんも保障はしてくれないとおもいますし、
ましてや、健康被害については言わずもがなということでしょう。)

イヌハッカ、オレガノ、キャラウェイ、クミン、コリアンダー、スイートオレンジ
スペアミント、タイム、トウガラシ、パインオイル、バジル、ペパーミント
モミ、レモングラス、ローズマリー、丁子油・・・etc
Apidologie (2012) 43:334–347。からです。詳しくは本文をごらんください。

一般に精油について、ネコは過敏ですから、アロマエッセンス(水溶性)かつエッセンスの種類に注意が必要です。
カンキツ系はイヌでは敬遠することが多いでしょう。


dumboのところでは、
herb.jpg
こんなハーブが真っ盛りです。
いい香りですよね。
(花ではなく葉っぱですよ)
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コメント 2

hirometai

dumbo様
こんばんは
植木に殺虫剤は使いたくないのです。
使用した自分が具合悪くなってしまうので・・・
そう言えば、うちの愛犬アラレも柑橘類の匂いは好みませんでした。納得。
by hirometai (2017-05-16 20:53) 

dumbo

hirometaiさま、こんにちは。
色々なお薬が出ているということ自体、Bestはないのでしょうね。
体に合ったお薬が見つかるといいのですが、
探すまでが一苦労と常々おもいます。
by dumbo (2017-05-17 08:59) 

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