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アメーバというのは・・・運動の仕方のこと? [肉質虫]

アメーバというと、どろどろと動くものを総称して呼ぶのですが、その名もずばりな種類がいて、
アメーバ.jpg
アメーバ(Amoeba proteus)さんです、いかにもそれらしい動きをしていますね。

マヨレラ.jpg
こちらは、マヨレラ(Mayoerlla)さんです。こちらの方がアメーバっぽく感じる方がおられるかも知れません。

サッカメーバ.jpg
アメーバさんたちには前後がなさそうに思えますが頭と尾っぽが別れていて、
多くの種類ではウロイド (Uroid)と呼ばれる尾部が存在し、細い突起が出ています。

前に葉状仮足(lobopodium)と、糸状仮足(filopodium)に分かれるとお話しましたが、
トガリツボカムリ2.jpg
葉状といっても、こんな棒状だったりします。

グロミア.jpg
糸状はかなり細いので見分けはつきますね。

ところで、アメーバ運動とは何なのでしょう。
実際のところ、繊維芽細胞や神経の軸索突起などと同じ機構のようなので、
2001 Nature Publishing Group / www.els.net 1-6など、いろいろな所で解説されているとおり、
動力源はアクチン(actin)によるものと考えてよさそうです。

その仕組みは、アクチンフィラメントが膜の内側にニョキニョキと形成され、
繊維が出来上がった後、収縮に関与するということです。
Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 2000. 29:545–76に、合成経路がありました。

さて、アメーバの運動の際に透明冠が見えることがありますが、
そこではおそらくフィラメントの合成が行われているのでしょう。
原生動物学雑誌 第35巻 第1号 2002年P.20によると、
透明冠には繊維の集積がないと述べられているように、合成の場と考えるといいように思えます。

(さまざまな論文からの推測によると、

細胞膜からアクチン繊維が離れる(切れる?or分離する)
    ↓
原形質(アクチンの材料とともに)が細胞膜を膨張させる
    ↓
その空間を埋めるようにアクチン繊維が再合成
    ↓
出来上がったアクチン繊維が運動を引き起こす。

こんな感じに今のところ考えられるでしょうか)

アメーバは這うだけでなく泳げます [肉質虫]

Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Jun 22;107(25):11376-80によると、
タマホコリカビ(Dictyostelium)のアメーバ体は泳げるとのことです。

4.2μm/minの速度だそうです。時速0.25mm位ですね。
ちなみにガラス上は3.8 μm/minとのことですので歩くより速いんですね、
だいたい同じくらいの速度なので、じつは水の中を這っているのでしょうか?

そこでどうやって泳ぐかですが、やっぱり調べた方がおられるのですね、
PLoS One. 2013 Sep 11;8(9)によると
周囲の流れを作るのではなく、形態の変化によって泳いでいるようです。
鞭毛や繊毛によらない新たな泳ぎ方、這い泳ぎとでもいうのでしょう。

ところで他のアメーバさん達も同じ機構でうごいているので、じつは泳げるのでしょうね。

ハートのエースは出てきませんが [肉質虫]

ハートのエースはありませんが、クラブ(三つ葉)でしたら見かけます。
Difflugia.jpg
ツボカムリ(Difflugia)さんです。

足の出てくる穴は円形ばかりでなくこんな形のものもあるんですね。

なかには四葉とかもあるので、見つけたらラッキーですよ。

アワビのようなアメーバ コクリオポディウム Cochliopodium [肉質虫]

コクリオポディウム.jpg
コクリオポディウム(Cochliopodium)というアワビのような貝殻を持ったアメーバです。
普通のアメーバみたいに何の変哲も無い風貌をしていますが、すごい物を隠し持っているのです。
(光学顕微鏡では確認できませんが)。

さて、アワビの貝殻は1枚で出来ていますが、
こちらの貝殻は小さなスケール(scale:また出てきましたね)が平面状にならんで形づくられています。
細かいユニットからなる甲羅なので柔軟性があり、アワビよりずっと進んだ構造をしています。
(アワビにはアワビで更なる不思議があるのでしょう)

さらに、Acta Protozool. (2014) 53: 325–333、等をみて頂くと良いのですが、
スケールの形状が鼓(つづみ)あるは銭湯にある籐で編まれた椅子の様で、あまりの精密さに

    ?   ?   !

この生物はいったいどうやって作っているのでしょう??!
うーん?不思議でなりません。

わたしも殻があるのですが・・・ フセウロコカムリ Trinema [肉質虫]

Trinema_enchelys.jpg
殻のあるアメーバのお仲間のフセウロコカムリ(Trinema enchelys)さんです。
特徴である糸状の細い足が見えていますがわかるでしょうか?

これまでに有殻アメーバ(testate amoeba)の、ナベカムリ(Arcellina)、ツボカムリ(Difflugina)のフセツボカムリ(Centropyxis)とナガツボカムリ(Difflugia)、が登場しましたが、
殻があるといっても、フセウロコカムリさんは有殻糸状根足虫類に分類されるので仲間といっても遠い親戚にあたります。

ややこしいのですが、殻を持つアメーバは有殻アメーバと称するのですが、
足の形が葉っぱ状をしており、有殻葉状根足虫類と言われます。

それに対し、足が細い仲間は糸状根足虫に分類され、殻を持っていても、
有殻アメーバには入れず有殻糸状根足虫類と呼ばれるのでした。
(有殻糸状根足虫類は有殻アメーバ(testate amoeba)とは呼ばないのだそうです)

とは言っても、形はかなり似ていたりするので、スケールと言われるうろこ状のもので覆われているのでした。
Acta Protozool. (2011) 50: 1–14で、
スケールの走査型電子顕微鏡像がご覧いただけると思います。

ところで、葉状仮足(lobopodium)、糸状仮足(filopodium)といってもたいした違いではなく、
動力元のアクチンフィラメントの並び方が異なるだけで、
葉状では網目状に、糸状では直線状に配列したものと解釈できるようです。

さらに、太陽虫のところで出てきた、軸足に存在する微小管(microtubules)とは異なった繊維なので、
太陽虫の軸足は糸状でも糸状仮足とは呼ばないのでした。

葉状仮足については、Journal of Cell Science 122, 1955-1958.が、
糸状仮足については、Mol. Biol. Evol. 30(9):2013–2023.が、
詳しいでしょうか。

みの虫の着せ替え? ナガツボカムリ トガリツボカムリ Difflugia acuminata [肉質虫]

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ナガ(トガリ)ツボカムリ(Difflugia acuminata)さんです。約0.2mmの、アメーバ界の極小みの虫です。

みの虫といえば色紙を切って、みのを作らせる実験がありましたが
最近ははミノムシが珍しくなくなって出来ないそうです?

ナガツボカムリさんはアメーバなのでみのから取り出すことは難しそうですが、
分裂やみのの作り方は前回のトゲフセツボカムリと同様ですので、
細かい色砂を入れて飼っておくと、綺麗なみのが出来そうです。
学校の理科の実験に?、いかがでしょう・・・?

分類は、
Acta Protozool. (2004) 43: 133 - 146や、
Protistology 7 (3), 121–171 (2012)が詳しいですね。

カラをかぶったアメーバ トゲフセツボカムリ Centropyxis aculeata [肉質虫]

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殻をかぶったアメーバのディフルギア(Difflugina)の中の大型種、トゲフセツボカムリ(Centropyxis aculeata)です。

こんな形でどうやって分裂するのだろうと思ったので調べると、やっぱり変わっていて、
Genetics. 1918 Mar;3(2):173-206. によると、
まず始めに、古い殻の開口部から細胞質が膨張し、古い殻と点対称(開口部をくっつけた形)に新しい殻を形成します。
新しい殻の表面に、砂粒やその他珪藻などを付着させた後、硬化して新しいお家が完成します。
その後内部の細胞は分裂し、子供のアメーバが誕生するとのことです。

さて面白いのは分裂の仕方だけでなく、
クローンであるはずの子供の棘の数と、開口部の大きさが必ずしも一致しないという点でしょう。
ここにも形質の遺伝についての、いたずらが潜んでいるようです。

トゲはグシャッと縮みます ウロコタイヨウチュウ Sphaerastrum Raphidiophrys [肉質虫]

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Sphaerastrum(ウロコタイヨウチュウ:Raphidiophrys)の群生です。軸足にまでスケールが付着してますね。
ここまでいくと、何でもありのファッションな感じで、スパンコールギラギラです。

さて、太陽虫の移動についてですが、
y. Ceil sd. 3,231 -244 (1968)によると、
その移動の仕方は玉ころがしのようで、顕微鏡を観察しているときに移動している様子からも伺えます。

しかし、その足はからだの移動に使われるよりも、
Jpn. J. Protozool. Vol. 35, No. 2. (2002)によると、
おもに食べ物の輸送に使われるらしいので、どちらかと言うと手ですね。

軸足と呼ばれる足ですが、付け根が動くのではなく伸び縮みします。
Zoological Science 20 (11): 1367-1372. 2003によると、
他の生物で見られる収縮より1000倍(1–10 mm/sec)もの速度で収縮が可能であると述べられていて、
いかにすばらしい足(手?)を持っているかがわかります。

縮む機構ですが、他の生物では見られない独特な機構であるらしく
J Cell Biol. Aug 1, 1992; 118(3): 585–594.によると
節間の不安定化と崩壊によるものだろうと推測されています。
またCELL STRUCTURE AND FUNCTION 10, 63-70 (1985)によると
繊維をねじることによって収縮するのだろうともいわれています。
ペットボトルをグシャッとつぶす感じといえばいいのでしょう・・・?

ビーズをまとった太陽虫 アミメタイヨウチュウ Pompholyxophrys [肉質虫]

Pompholyxophrys_.jpg
小さなビーズをまとったアミメタイヨウチュウ(Pompholyxophrys)です。

スケールの形はそれぞれの太陽虫で異なっていて、自分で選ぶわけではないのでしょうが、
行き着く先は球なのでしょうか?
一つ一つのスケールはきらきらと光るビーズのようです。

微細な生物にこれだけの装飾を施すなんて、進化の行く着く先にはなにがあるのでしょう?

太陽虫はお仲間いっぱい アカントキスティス Acanthocystis [肉質虫]

太陽虫の仲間は結構沢山いてよく調べられています。
以前、微小管配置が異なっているとお話いたしましたが、光学顕微鏡では見えませんので分類の役には立ちません。
そこで先人たちは細胞の形状による分類を行っています。
もちろんDNA等による分類とちぐはぐな点が出ているようですが、名前を知りたいときには役立ちます。
アカントキスティス2.jpg
アカントキスティス(Acanthocystis)と呼ばれる種類の太陽虫です。
細胞の表面の層をなしている部分に珪物質のスケール(scale)と呼ばれる、うろこ状のものがあります。
よくみると短か目の棘があるとお分かりになると思いますが、こちらも放射状スケールと呼ばれるうろこです。
電子顕微鏡で見ると放射状スケールの形はユニークなのですがお見せできないのが残念です。
最後に、いちばん長いものが軸足と呼ばれる足になります。

ざっと分類表を作成しておきます。
外周 鞭毛 微小管配置 その他
Ciliophrys,Dimorpha,Tetradimorpha 収縮胞孤立 1,2,4(遊泳型) 三角,5点形
Actinophrys
アクチノフリス.jpg
Actinosphaerium
名称未設定.jpg
収縮胞孤立
収縮胞が周囲を囲む
2重コイル
Clathrulina
Hedriocystis ヘドリオキスティス.jpg
網状の殻の中央に穴,殻の先端に穴 2(遊泳型) 5点形
Acanthocystis アカントキスティス2.jpg 放射状型と小型楕円スケール 六角形 スケールは整列している
Raphidiophrys Sphaerastrum Raphidiophrys.jpg 棘型と大型楕円スケール 六角床 スケールは軸足にも及ぶ

表以外に数種記入したいものがあるのですが表からはみ出るので、今日はここまでです。

以下が参考になりますでしょうか
Acta Protozool. (2000) 39: 81 - 97
Acta Protozool. (2000) 39: 99- 115
Acta Protozool. (2001) 40: 3 - 25
スケールについては以下です
J Cell Sci 1988 91:33-39
Acta Protozool. (2014) 53: 313–324