SSブログ
アルベオラータ(繊毛虫以外) ブログトップ
- | 次の10件

茶色虫のダウンジャケット [アルベオラータ(繊毛虫以外)]

今日は、アルベオラータ(Alveolata)という言葉が出てきましたので、そのお話です。

アピコンプレクスはマヨネーズのような頭の形をした仲間で、
その方たちは葉緑体のようなものを持っている(あるいはいた)ことは、お話しました。

葉緑体は数種存在することはご存知だと思いますが、色素(クロロフィル:Chlorophyll)の含まれかたで、
緑色植物(クロロフィルbをもつ)と紅色植物(クロロフィルbを持たない)に分かれますね。
(灰色植物ってのもあるそうですが・・・)

葉緑体をもつ微生物ではミドリムシさんが有名で、その方はクロロフィルbを含むので緑色です。
しかし、アルベオラータさんたちはそれがありませんので、だいたい褐色です。
ミドリゾウリムシさんは、以前ご紹介したように本当の意味で共生なのでおいときますかね・・・)

ミドリムシ アルベオラータ 緑色 紅色


さて、本題に入ってミドリムシさんたちは、ペリクルストリップなる構造を持っているのが特徴でしたが、
アルベオラータさんたちにも共通の構造があって、それがアルベオラ(Alveola)という袋状の構造なのでした。

皮膜直下にある構造で簡単に図示しておきましょう。
アルベオラ.png
Aが、アピコンプレクスで、皮質の下に広がった袋のみの構造です。
Bが、渦鞭毛虫で、袋の中に硬い板のようなものが入っています。
Cが、繊毛虫で、所々穴の開いた、あるいは細かい連続した、袋の構造です。
(繊毛虫の皮質の構造は以前のお話を参考にしてください。)

ちゃいろ虫(赤色虫?)のなかまは、皮膚の下に袋を持っているのですね。
ダウンジャケットを隠し持っているのですが(皮膚の下ってところがオチャメですね)、
何のためにあるのかは、素晴らしい秘密があるのでしょうが、う~ん、どうしてなのでしょう?

Mol Biol Evol (2011) 28 (3): 1319-1331.にアルベオラの解説が、
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Jun 16;106 Suppl 1:9963-70.にミドリムシさんとの対比があります。
では、またこの辺で。

アルベオラータ(Alveolata)の分類 [アルベオラータ(繊毛虫以外)]

遠回りをしていましたが、前日の繊毛虫などを含めて、
アピコンプレクサの分類を一段上がるとアルベオラータ(Alveolata)といわれるようです。

きょうは、アルベオラータ(Alveolata)の系統樹を作図しておきましょう。

タイレリア(Theileria buffeli) バベシア(Babesia gibsoni) カリオスポーラ(Caryospora bigenetica) アイメリア(Eimeria alabamensis) トキソプラズマ(Toxoplasma gondii) Selenidium terebellae Monocystis agilis Ophryocystis elektroscirrha クリプトスポリジウム(Cryptosporidium serpentis) Colpodella sp. ヤコウチュウ(Noctiluca scintillans) Cryptoperidiniopsis brodyi アンフィディニウム(Amphidinium semilunatum) プロロセントルム(Prorocentrum emarginatum) ギムノディニウム(Gyrodinium dorsum) キタカンムリムシ(Dinophysis norvegica) Kryptoperidinium foliaceum Durinskia baltica(=ペリディニウム:Peridinium balticum) Eukaryote clone Amoebophrya sp. Hematodinium sp. パーキンサス(Perkinsus marinus) Parvilucifera infectans オキシトリカ(Oxytricha nova) ディディニウム(Didinium nasutum) マユガタミズケムシ(Urocentrum turbo) フルガソニア(Furgasonia blochmanni) プロトクルジア(Protocruzia sp.) ブレファリスマ(Blepharisma americanum) アピコンプレックス(Apicomplexa) コルポデラ(Colpodella) Perkinsids 渦鞭毛藻(Dinoflagellate) 繊毛虫(Ciliate)
J. Eukaryot. MicroDiol., 50(S), 2003 pp. 334-340.によります。

SVGでの表示です。表示されなかったら申し訳ありません。
少しですが、今まで登場した方たちにリンクが飛ぶようにしておきました。

鎖を繋ぐ者たち [アルベオラータ(繊毛虫以外)]

食事をするミドリムシのところで、
ラパザビリディス(Rapaza viridis)という食事をするミドリムシのお話をしましたが、
今日は多様性をつなぐ方たちのご紹介です。
(残念ですが、写真はございません、うーん・・・)

アピコンプレックス(Apicomplexa) Chromera velia Paramecium tetraurelia 渦鞭毛藻(Dinophyceae) コクシジウム(Coccidia) ピロプラズマ (piroplasmida) 住血胞子虫(haemosporidia) 繊毛虫(Ciliophora) 葉緑体の喪失 葉緑体の喪失
(試しに、SVGにしてみました。表示が変でしたら、コメント頂ければさいわいです。)

お一人目は、Chromera veliaと呼ばれる方で、
アピコンプレックスのアピコプラストと、渦鞭毛藻の葉緑体の遺伝子を持ち、光合成を行い、
自由生活をおくっているとのことです。
Nature 451, 959-963 (21 February 2008) .からのお話です。

二人目は、Paramecium tetraureliaさんで、こちらは繊毛虫のゾウリムシの一種ですね。
こちらは痕跡のみの発見ですが、葉緑体の部品?が見つかったということです。
Curr. Biol. 18: 956-962.からのお話です。

三人目は、Hatena arenicolaさんで、鞭毛と葉緑体を持ち、捕食と、光合成のどちらでも出来る生物で、
ラパザビリディスのような感じですね。
Science 310: 287. からのお話です。

いやあ、リンクをつなぐ方たちが見つかってくるたびに、
「種とは」いったいなんなのでしょうという疑問がわいてきますよねぇ。

今日はこんなつぶやきで締めましょうか?

植物性原材料のヘルシーマヨネーズ [アルベオラータ(繊毛虫以外)]

ご紹介しているアピコンプレックス(Apicomplex)の仲間について、もうちょっとお話が必要なことがありました、

前にお話ししたように、マヨネーズのような形(キャップ部分が、apical-complexという共通の形)を、
しているのがこの仲間の特徴なのですが、その他のさらに興味深い部分についてです。

アピコプラスト(apicoplast)という器官がありますが、これがなんと葉緑体の痕跡だというのです。
(Cryptosporidiumの仲間にはこの器官は無いようですが・・・)

35kb circular DNAという遺伝子が、このアピコプラストにあるのですが、その分析で解ったことのようです。
さて、この辺を解読したうえで本題の、アピコンプレックスの系統樹をその前から眺めますと、
アピコンプレクサ分類.png
この方たちは、渦鞭毛藻に似ているんですねぇ。

えっ?繊毛虫ってのもありますねぇ!???
ここにはまた興味深いお話があるのでまた今度にでも・・・

本日は、Curr. Issues Mol. Biol. 7: 57-80.からのお話でした。

アピ≒ピロ≒バベ≒タイ≒・・・○×△ [アルベオラータ(繊毛虫以外)]

今日は、赤血球を標的とするアピコンプレックス(原虫の一門)のうちのピロプラズマさんたちの仲間のお話です。

ピロプラズマの仲間は、バベシア(Babesia) とタイレリア(Theileria)の2属が有名です。
あと、もう1属くらいいたような気がしますが・・・ 何でしたっけ?

さて、下は犬の血液に寄生した、バベシアさんです。
バベシア01.jpg
トロポゾイト(trophozoites)が赤血球に入っています。
わかりづらいので、矢印を付けておきました。
J Vet Diagn Invest 16:229–233 (2004)が詳しいでしょうか。

犬に寄生するお仲間は日本では、
Babesia canis(2-4×4-7μm)、Babesia gibsoni(1.1-2×1.2-4μm)がおもなので、
写真はBabesia gibsoniでしょうか。
宮崎大学農学部研究報告, 52(1/2): 11-20,2006に日本でのお話がありました。

バベシアの生活を、寄生される側から図示すると下のような感じですね。
バベシア00.jpg
Vet Res. 2009 Mar-Apr;40(2):37によると、バベシアさんは、
哺乳動物内では生殖細胞を生成しないとのことです。
なので、今までご紹介した寄生虫とは違って、ダニに対しての寄生生物なんですね。

しかも、Babesia canis、Babesia gibsoniはひょっとするとその有性生殖すら、
しないかもしれないらしいのでなんて変わっているのでしょうか。
うーん、全てクローンってことなのでしょう、遺伝的形質の違いも他の種に比べて少ないようですし・・・
(そのため、たぶん上図のザイゴートは無いのでしょう? しかし、キネートは見つかっているようです)


それでもって、バベシアさんからの立場で図示すると下のようになりますか。
バベシア.png
Maltese cross formsは犬のバベシアにはないみたいですね。(B. microtiはあるそうです)
J Vet Diagn Invest 16:229–233 (2004).が詳しいでしょうか。

今日もこのくらいで、
そうそう、バベシアさんはダニのなかで経卵巣伝播(transovarial transmission)しますが、
タイレリアさんは経卵巣伝搬は出来ずに経発育期伝播(transstadial transmission)しかできません。
(卵巣を通り、卵の中へと寄生するかしないかということです)

また、タイレリアさんは赤血球に寄生する前にリンパ球や、マクロファージに寄生しますが、
バベシアさんはしないそうです。(B. microtiはリンパ球、Mφに寄生するようです)

しかし、名前がほんと変わりますよねぇ、いったいどの形が成虫なのやら。
あっ、ガメトサイトでしたか???

コンプレックス? アピカル+コンプレックス [アルベオラータ(繊毛虫以外)]

今日は、前回の発育名が複雑で、チンプンカンプンなので、その辺りの解説です。


前出のコクシジウムなどの原虫はApicomplex(アピコンプレックス)と呼ばれているのだそうで、
これは、apical-complex(天辺を束ねたといった独特の構造)から由来します。
べつに、頭の髪の毛が薄くなって気にして・・・ではありませんねぇ。
International Journal for Parasitology 39 (2009) 153–162.によります。

構造を図示しておきましょう。
アピコンプレックス.png
トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)のタキゾイト(tachyzoites)の様子です。


さて、アピコンプレックスたちの仲間の成長段階は3つに分かれます。
スポロゾイト(sporozoite)、メロゾイト(merozoite)、ガメントサイト(gametocyte)です。

その間にタキゾイト(tachyzoite)、ブラディゾイト(bradyzoites)があり、
(ガメントサイト以外はほとんど似た形状なので、上図がこの虫たちの基本形ということですね)
卵みたいな、シスト(cyst)、オーシスト(oocyst)を含む場合があります。


トキソプラズマを例にとってご説明しておきましょう。
アピコンプレックスライフサ.png
トキソプラズマは、上図のような生活を送っています。

無性生殖は、「~ゾイト」と呼ばれる状態の細胞が分裂し、
 (感染した動物の白血球の中で増殖して様々な臓器へとたどり着き、シストを作るといった場合・・・)
有性生殖は、「~ガメントサイト」と呼ばれるものが接合し、最終的にオーシストを作る場合をいいます。

Clin. Microbiol. Rev. April 1998 vol. 11 no. 2 267-299.によります。
そのほかの、アピコンプレックスもだいたいこんな感じですね。


トキソプラズマが有性生殖を行えるのは猫に寄生したときのみですので、
猫科の動物の寄生虫ということになるのでしょうか。

本来はオーシストをネズミが食べて、そのネズミを猫が・・・といったサイクルを行っています。
前回お話したように、人も猫の標的ってわけではないのでしょうが、感染しますね


コクシジウムは前にご紹介しましたのでそれ以外の仲間を作表しておきましょう。

Plasmodium Theileria Toxoplasma Cryptosporidium
感染部位 肝臓 白血球 白血球
メロゾイト メロゾイト タキゾイト メロゾイト
最終感染細胞 赤血球 白血球 多臓器細胞 腸細胞
ガメントサイト ピロプラズマ ブラディゾイト マクロ・ミクロガメントサイト
有性生殖 ダニ 多種
スポロゾイト スポロゾイト スポロゾイト スポロゾイト

Genome Research 19.7 (2009): 1202–1213. が詳しいでしょうか。

Plasmodiumはマラリア原虫として有名ですし、そのほかもほとんどが寄生を生業としている生物です。
では、本日はこの辺で。

複雑なる発育名 [アルベオラータ(繊毛虫以外)]

今日は、原虫のお仲間、コクシジウム(Coccidia)さんです。

下は犬の便のからのオーシスト(Oocyst、=卵みたいなもの)です。
イヌコクシ00.jpg
すでに分裂を始めていて、2個の細胞が見られますね。
周りに小さく認めるのは外残体(Oocyst residuum)あるいは極果粒(Polar granuleと)呼ばれるものでしょう。
J. Vet. Para., Jab, v.23, n.1, p.1-15, Jan-Mar 2014.に詳しいオーシストの解説がありますね。

その後、2個の細胞一つ一つが、さらに4つの細胞を持つようになり、
スポロシスト(Sporocyst)と呼ばれるものになります。
最終的に一つ一つの細胞がスポロゾイト(Sporozoite)と呼ばれるのですね。
(ややこしいので、下に図示しておきます)
オーシスト.png

このお仲間は多種おられるので鑑別は厄介です。
通常は大きさにより判断しますが、実際のところ?ですね。
イヌコクシ01.jpg
大きさから、I. ohioensis?でしょうか。

おもな種類の、大体の大きさは、下表のようになります。

Oocysts(μm) Sporocysts(μm) Sporozoites(μm)
I. canis Dogs 34–40×28–32 18–21×15–18
I. ohioensis Dogs 19–27×18–23 15–19×10–13
I. burrowsi Dogs 17–22×16–19 12–16×8–11
I. rivolta Cats 18–28×16–23 14–16×10–13
I. felis Cats 38–51×27–39 20–26×17–22
C. parvum Dogs 5.0×4.5 11.1×1.0
C. muris Dogs 5.0×4.5 4.9×1.2
T.gondii Cats 9-11×11-13 8.5×6
B.wallacei(I. Bigemina) Cats 17×12 11×8
H. hammondi Cats 10.6×11.4 10×6.5

MICROBIOLOGICAL REVIEWS, Dec. 1986, p. 458-483
J.Vet.Med.Sci.68(11):1191-1193,2006.
J Exp Med. 1970 Oct 1;132(4):636-62.
September 2000, Volume 86, Issue 10, pp 783-786.
The Coccidian Parasites(Protozoa.Apicomplexa)of Carnivores.などが参考になりますでしょうか。

その他のコクシジウムの仲間をざっとあげると
Isospora felis、I.rivolta、I.canis、I.ohioensis、Besnoitia wallacei(I.bigemina)、I.heydorni
Hammondia hammondi
Sarcosystis cruzi、S.hirsuta、S.miescheriana、S.porcifelis、S.fayeri、S.capracanis、S.hircicanis
Frenkelia microti?
Eimeria saitamae、E.uzura、E.tsunodai (鳥のアイメリア)
E.leuckarti、E.falciformis、E.separata、E.nieschulzi、E.caviae、E.capricornis (哺乳類のアイメリア)
Neospora caninum
Toxoplasma gondii
その他、Cryptosporidiumなど、など、たくさんあります。
日本における寄生虫学の研究6(1999)Ⅱ分類・形態・寄生虫相によります。

コクシジウムの仲間には、中間宿主(Hammondiaや、Besnoitiaのなかま)が必要だったり、
便に出てくるときにすでにスポロシスト(Sarcosystisのなかま)だったりするので、
成長の仕方も変化に富んでいます。

代表的なアイメリアの成長の仕方は下図になるでしょうか。
コクシジウム00.jpg
名前がころころと変わるので複雑怪奇ですね。

ひとに対する寄生性がある種類がいますので注意しないといけません。
特に、Toxoplasma gondii、は妊娠中に感染すると大変なことになりますので・・・

Pediatr Int. 2014 Aug;56(4):637-9.に新生児のトキソプラズマによる死亡者数が報告されています。

- | 次の10件 アルベオラータ(繊毛虫以外) ブログトップ