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ホーホー ほーたる来い? [ユーグレナ]

蛍を見に行ったのですが、ホタルには出会ったのですが、
残念ながら撮影に失敗しましたので、

代わりのお写真です。
ミドリムシ.jpg
池の水が抹茶のようになっていたので、すくってみたのがこれです。

緑に光る小さいものがほわーん、ほわーんと、まるでホタルのように。

ミドリムシ02.jpg
拡大するとミドリムシ(Euglena)さんが大量発生していたのでした。

ほたるさんは、また来年かなぁ・・・


追加)
実際に撮影したものはこんな感じです。

難しいですね。

ミドリムシの分類 [ユーグレナ]

いっぱいミドリムシの仲間が出てきましたので、この辺で整理しておきましょう。

ペリクルストリップをもつミドリムシたちの分類です
鞭毛2本 葉緑体 ペリクル枚数 その他
ペタロモナス(Petalomonas) ペタロモナス__.jpg 1本は前 無し 4・8 硬い
プロエオチア(Ploeotia) 1本は前 無し 10 硬い
エントシフォン(Entosiphon) 1本は前 無し 12 硬い
ヘテロネマ(Heteronema) ヘテロネマ.jpg 1本は前 無し 28  
ペラネマ(Peranema) ペラネマ.jpg 1本は前 無し 50  
ラパザ(Rapaza) 同じ あり 16(先端8)  
ユートレプティア(Eutreptia) 同じ あり 48(先端24、次36)  
ユーグレナ(Euglena) ミドリムシ.jpg 1本は極短 あり 40(先端10、次20)  
ファカス(Phacus) P1310422.jpg 1本は極短 あり 32(?) 硬い、うちわ状
レポキンクリス(Lepocinclis) レポキンクリス2.jpg 1本は極短 あり 32・36(?) 硬い

今まで紹介したもので表に無いものは、
透明な仲間は表の上の方(ペタロモナスあたり)に、
緑の仲間は下の方(ユーグレナ=狭義のミドリムシあたり)に分類されます。

上表は、
BMC Evol Biol. 2012 Mar 8;12:29.と
Bioessays. 2007 Oct;29(10):987-1000.を参考にしました。
なおペリクル数はおおよそで、種によりばらつきがあるのはもちろんです。

ひゅーどろどろどろ、極小のヒトダマ アニソネマ Anisonema [ユーグレナ]

Anisonema_.jpg
極小の透明ミドリムシ、アニソネマ(Anisonema)さんです。

このミドリムシもまたペリクルストリップがあるのですが、かっちかちの殻を持っているので、
鞭毛でしか動けません。ゆらゆらとした動き方は、まるでヒトダマを彷彿とさせます。

(と、ヒトダマをみたことあるような話しっぷりですが、実際に見たことはありません。
あくまで想像のお話です。うちの親は昔見たと言っていましたが・・・)

ヒトダマといっても光りませんが、とちゅうでくるっと方向を変えるかわいいミドリムシです。

クチナシの実 カリキモナス Calycimonas [ユーグレナ]

Calycimonas_.jpg
クチナシの実のようなミドリムシ、カリキモナス(Calycimonas)さんです。

この方もかっちかちの殻を持っているので鞭毛だけでうごきます。

その鞭毛のはえぎわに口(microtubule reinforced (MTR) pockets:feeding pocket)があるですが、
おちょぼぐちのようになっていて、そんなに開かずに吸い込むように食事をするようです。
なので、あまり大きなものは食べられません。
BioEssays 29:987–1000,  2007にちょこっとだけ解説が出ています。

走査型電子顕微鏡の像で見るとひょっとこのような口がご覧いただけるのですが・・・
うーん、お見せできないのが残念です。

ゆらりゆらゆら、さやえんどう メノイディウム Menoidium [ユーグレナ]

ゆらゆらと泳ぐ姿が優雅な三日月型のミドリムシ、メノイディウム(Menoidium)です。
メノイディウム.jpg
良く見かけるのは上のような、絹さや(さやえんどう)のようなものですが、
柿の種みたいなずんぐりしたものから、
さらに細長く日本刀のようなすらっとした形状のものまでさまざまな仲間がいます。

このミドリムシも例にもれず、ペリクルストリップを持っていますが、
隆起が非常に少なく光学顕微鏡ではわかりづらいですね。

サインはブイ [ユーグレナ]

また昔ネタで恐縮ですが・・・ミドリムシはVの字に分裂します。

学校でミドリムシが縦分裂と習った方がおられるでしょうが、何で縦に分裂するのでしょう。
不思議に思いませんでしたか?

縦分裂=細胞の長い軸に沿って分かれる。
うーん縦、横ってややこしいですよね。
魚は泳いでいるときに横の縞を、縦縞とよびますし。
あ、これも長軸ですね。実際は釣り上げたときの見え方らしいですが。って、縦横はおいておいて、

プロセスチーズを裂いたことが無い人はいないと思いますので思い出してください。
ミドリムシのペリクルストリップも同じ、縦に裂ける。

そこです。

もうお分かりと思いますが、
古いペリクルストリップの隙間に新しいペリクルストリップが作られます。
その出来方は基本的に、間に1本ですので2倍。

始めのペリクルストリップが10本だとすると、間も10、
なので20本を半分に裂いて、二匹のミドリムシの、

で・き・あ・が・り。

ペリクルストリップを持つミドリムシならではの分裂方法のお話でした。
Bioessays. 2007 Oct;29(10):987-1000.に分裂時の図がありました。

ところで、もしかしたらどこかに、ずーっと先祖代々のペリクルを使っているミドリムシがいるのでしょうか?

食事をするミドリムシ ヘテロネマ Heteronema [ユーグレナ]

ひさびさのミドリムシ登場です。
ヘテロネマ.jpg
なんだか緑色をしてませんね、この方はヘテロネマ(Heteronema)さんです。
ミドリムシの一種ですが葉緑体を持っていないのです。
光合成できないので、栄養は他の生物を食べることによって補給します。

どうやって食べるかですが、残念ながらペリクルは外れませんので横からは食べれません。
頭部の鞭毛の生えている(flagellar pocket)部分を広げ、飲み込むように食事します。
外の栄養を必要としているからでしょうか、緑色のミドリムシの数倍の速度で動きます。
ミドリムシ運動を観察するには絶好の生物でしょう。
(Journal of Eukaryotic Microbiology 2013, 60, 107–120に食事風景がご覧いただけます。)

さて、食事をするミドリムシと光合成をするミドリムシの中間の生物がどこかにきっといるはず。

そう、ちゃんと存在していたんですね。

今日の話題のもうひとつ、ラパザビリディス(Rapaza viridis)という名のミドリムシがそれです。
このミドリムシは食物を食べることも出来るし、光合成も可能な万能生物です。
(写真は下記参考でご覧いただけます)

進化の過程を教えてくれる貴重なミドリムシで、
今いる光合成をするミドリムシはこのラパザさんから分かれたのではないかと考えられています。

ラパザビリディスのRapaza viridisという名前は、
ラテン語のrapax(つかむ)と、viridis(緑)からつけられたとのことで、おそらく一属一種のミドリムシでしょうか?
カナダのPachena Beachの潮溜りから発見されたそうです。たぶん発見者は日本の方でしょう。

BMC Evol Biol. 2012 Mar 8;12:29からのお話でした。

続・柔らかい瓦 [ユーグレナ]

Euglena spirogyra.jpg
ハリセンボンのようにトゲトゲのミドリムシ(Euglena spirogyra)です。
ファスナーのようなトゲがペリクルの中央部分に等間隔に並んでいます。
このトゲの形状が芸術的で、SEM(Scanning Electron Microscope):走査型電子顕微鏡による画像はみごとです。
Ultrastructure of the pellicle ornamentation.pdf」にありましたのでみてください。
本当は等ブログでご紹介したいのですが、SEMを持っていませんので申し訳ありません。
(NeoScopeとか、普通持っている人はいないですよね?)

このトゲが何の役に立っているかはいずれお話するとして、ペリクルの動きの解析には役立ちます。

ミドリムシ1.jpg
Euglena-spirogyra3_1.jpg
滑っている感じがお解かり頂けるでしょうか?

かっちかちのミドリムシ レポキンクリス Lepocinclis [ユーグレナ]

レポキンクリス2.jpg
レポキンクリス(Lepocinclis)君です。
どうしてもミドリムシやゾウリムシには「君」をつけてしまいますね。
ミジンコはメスばかりだからでしょうか?

レポキンクリス.jpg
さてこちらもレポキンクリス(Lepocinclis)君です。

この硬いミドリムシの仲間もペリクルという構造はあるのですが、ユーグレナ運動はできません。
遺伝子学上他のミドリムシから枝分かれした、かっちかちのミドリムシです。
J Eukaryot Microbiol. 2010 Jan-Feb;57(1):19-32. doi: 10.1111/j.1550-7408.2009.00447.x. Epub 2009 Sep 7.で、
近縁のPhacusが進化の過程で硬い細胞膜を選んだのだろうとコメントしています。

柔らかい瓦 [ユーグレナ]

ユーグレナ運動2.jpg
ミドリムシのペリクルが独創的なので加筆しておきましょう。

南京玉すだれの様ですとお話しましたが、実際の形状は、細長い瓦を組み合わせた感じになっています。
それぞれの膜は微細な繊維でつながっていて(あるいは乗っかっていて)、その様子は玉すだれの様ではあります。

そのペリクルストリップ膜は1枚の板から出来ており、ミドリムシの頭から尾っぽまで続いています。
先端部分で束ねられるのですが、実際には中央のふくらみを増すために、途中から膜の枚数が多くなっていたりします。
その多くなり方が種によって異なっていて、指紋のように種の同定にも役立っています。

ユーグレナ運動.jpg
さてこの瓦は柔軟性を持っていて、ちょうど上図のように四角からひし形へのような感じで変形していくと考えられています。
(この柔軟性が、前回のIP39の構造によるのではないかとの報告でした)
これにより複雑なユーグレナ運動を可能にしています。

運動の動力は何がしかの機構が働いているようですが、まだ不明の点が多いようです。
ユーグレナ運動については、Jpn. J. Protozool. Vol. 37, No. 2. (2004)169-190が詳しいですね。