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あかい目、眼点(eyespot)、という眼? [トレボウクシア藻]

久しぶりに顕微鏡写真です。

クラミドモナス.jpg
クラミドモナス(chlamydomonas):コナミドリムシさんが再登場です。
パピラ(papilla)と呼ばれる透明のでっぱりがあるタイプですね。

この方は、二本の鞭毛をもちふらふらと動き回る小さなプランクトンです。
動物か植物なのかは、うーんどうなのでしょうね。
いままでのお話で、その辺はどちらでもOKみたいな感じに思えるのは私だけでしょうか?○×△


前回の細菌には固有名を持った部分(器官?)はありませんでしたが、
(センサリーロドプシンと呼ばれる蛋白が細胞膜に点在しているだけ)
こちらの方は、眼点(eyespot)と呼ばれる眼?を持っています。

最近、この眼がどうやって機能するかが解明されました。
Proc Natl Acad Sci U S A. 2016 May 10;113(19):5299-304.という報告です。
日本語では、基礎生物学研究所のプレスリリース2016年05月10日、が参考になると思います。

dumbo的に作図しますと、
クラミドモナスmove.gif
図中、青がチャネルロドプシンという蛋白で、これが光に反応し、
2つの鞭毛の動く速度を変化させることにより、方向を変えるということです。
(センサリーロドプシンに似た物質ということのようです)

赤い目の元である、赤はカルテノイド(ニンジンの赤などと同じ?)色素で、
クラミドモナス体のレンズ効果で、体を通過する光が強くなるのを防止するためについたと想定されます。
(遮光ということらしいですね)

2本の鞭毛の違いはないのか?と探していたら、
J Cell Biol. 2011 May 16;193(4):741-53.のような報告がありました。

簡単に解読しますと、鞭毛底部の4微小管の基部がこの眼点のチャネルロドプシンから生じているということです。
以前お話した、お話の2本の管部分です。
(分子の伝達?うーん先が知りたいのは私だけ???)

まさしく、ナノマシーンといった感じで、分子で組まれた精密機械なのですね。


さて、
眼点と言えば、有名なのはミドリムシさんです。
ミドリムシ.jpg
典型的な形の方です。

こちらの方の眼点は、鞭毛の基部に付着していて、これまた光走性(phototaxis)を調節しているらしいです。
ユーグレナ眼点.png
具体的には、短いほうの鞭毛が長いほうに付着する部分に感光体があって、
それを遮るように、眼点と呼ばれる遮光する構造が形づくられています。

感光体は副鞭毛体とよばれ、PAC:Photoactivated Adenylyl Cyclase、光活性化アデニル酸シクラーゼと呼ばれる蛋白?だそうです。
Nature 415, 1047-1051. によります。
日本語では、原生動物学雑誌 第 40 巻 第 2 号 2007 年、93-100、でしょうか。


ミドリムシはクラミドモナスと違って、直接鞭毛を操作しているのかもしれません?
うーん、眼と言っても色々ですね。


他のプランクトンたちでは、
Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2009 Oct 12;364(1531):2795-808.に総説がありました。

葉っぱ?になりました。 [トレボウクシア藻]

カワノリ(Prasiola japonica)さんのお話です。

この方は太平洋が好きなようで、日本海側の川には生息していません。
さらに、太平洋側でも絶滅の恐れが指摘されるほど、野生種が減少しています。
幻の川のりとして食べられたかたもおられると思います。
埼玉県立自然史博物館研究報告 No.13,29-35,December 1995.によります。

ところが、新潟県、長野県を流れる信濃川の上流で、千曲川の支流にも生息が認められているのです。
が・・・これは人為的な移植らしいので、植物の歴史(地理、生態、分化)に関しても貴重な種とされています。
広島文化女子短期大学紀要 13pp.59 - 67, 1980-04-20,によります。

さて、幻の生き物ですので、

さ ら に、

天然記念物?らしいので、採取には特別な許可が必要かもしれません。
なので、残念ですがお話のみのご紹介でした。

美味しいらしいですよ。

殻、から、~ [トレボウクシア藻]

トレボウクシア藻の特徴の一つに、
自生胞子(autospore)、(自生胞子⊆内生胞子:endospore)というのがあります。
内生胞子形成型.png
親の中で分裂し、殻を破って出てくるといった無性生殖です。
その分割数は種によって粗方決まっていて、数によって分類の助けになっています。

残念ながら、autosporeを行うのはトレボウクシア藻(Trebouxiophyceae)だけというわけではありません・・・
なので、autospore⇒Trebouxiophyceaeではありません。

また、殻を破って増殖することはtrueですが、殻を脱ぎ捨てるのというのは、essentialではありません、
ゆえに殻を着たままだったり、脱ぐのに時間がかかったりする亜型もあったりするわけです。
専修自然科学紀要 40, 23-28, 2009-03-05.や
The Plant Journal (2013) 74, 605–614..によります。

まあ、前に登場したジクチオスフェリウムさんもトレボウクシア藻のお仲間ですので、
殻好きな方が多いグループといったところなのでしょうね。

トレボウクシア藻というグループは最近まとめられたグループで、
今までは所属不明とされて方たちが主な構成メンバーです。

遺伝子的に近種であることは間違いないらしいので、これから期待がもたれる方たちでした。

プールが油田 ボツリオコッカス Botryococcus [トレボウクシア藻]

今日はかなり多細胞の、トレボウクシアのお仲間です。

ボツリオコッカス.jpg
ボツリオコッカス(Botryococcus)さんです。
ジクチオスフェリウムからさらに数をふやし密度を増した、といえばいいでしょうか。

さてこの方は、油を産生することで一躍有名になりました。
実際にカバーグラスでつぶしたりすると、ベトベトになるくらい油まみれになります。

三系統の炭素化合物を生成することが知られ、種類によって、A、B、L品種と呼ばれています。
A:アルカジエン(alkadiene)、アルカトリエン(alkatriene)
B:ボツリオコッセン(Botryococcene) 、メチルスクアレン(methylsqualene)
L:リコパジエン(Lycopadiene)
と生成する物質が異なります。

PLoS One. 2013 Dec 5;8(12):によります。

有望なのはB品種らしいですが、
長いこと石油として利用するには増殖時間が長いことが、ネックとなっていたようです(シャレ?)。
しかし、格段に増殖能力が高い品種(榎本藻)が発見されるなどして一躍有名になったのでした。
(どこにでもいる方たちなのですので探せばもっとすごい品種が隠れているかもしれません)

ちなみに実験プラントは、IHIですので本気ですねぇ。
休耕田の1/10で日本の石油?、ジェット燃料だけ?、がまかなえるとのことですが?、
今迄のところ1リットル500円位らしいです?・・・と?だらけですが、

今年、国内最大級1,500㎡プラントが稼動するようですので、期待は出来そうです。
(IHIホームページにて(現在建設中、2015年3月完成予定)。とありました)

こういったものから作られるエネルギーをバイオマスエネルギーというのでしょうか。

環境エネルギー政策研究所(http://www.isep.or.jp/library/1959)が詳しいらしいので調べてみると、
世界的にみると電力のバイオマスエネルギー利用は、
太陽光より多く第4位に位置するほど重要なようです。
(でも1.8%です。2013年末、推計値で、ほとんどは発酵によるメタンガスらしいですが・・・)

この小さな方たちが未来を担ってくれるのかもしれません。

楽々波 ジクチオスフェリウム Dictyosphaerium [トレボウクシア藻]

連鶴に「楽々波(さざなみ)」というのがあるのをご存知と思いますが、
今日はそんな方のご紹介です。

ジクチオスフェリウム.jpg
ジクチオスフェリウム(Dictyosphaerium)さんです。

この方は、親の細胞壁を連結膜?、糸?として多細胞化しているという特徴があります。

想像なのですが、
ジクチオスフェリウム.png
こんな感じに、さざなみのごとく親の細胞壁を切り分けて、
それを支持膜や糸として、子細胞をつなぎとめているのでしょうか?
図は2段で4×4=16細胞ですが、写真は4×4×4=64細胞なのでしょう、うまいこと考えたものです。

原理的にはフラクタル(fractale)のように、切り分け→増殖→切り分けと、何重にも続けられます。
シェルピンスキーの三角形(Sierpinski triangle)とか、ご存知でしょうか?

立体にすると、ロマネスコ(は左13、右8の螺旋ですが)といった野菜の原型になるでしょうか、
原理は単純なのですが、なんと興味をそそられる図形が出来上がることでしょう。
(実際にはさらなる不思議が隠れているのでしょう、想像が膨らみます。)

(ロマネスコについては、黄金比・・・という説明をよく目にしますが、
おそらく構成している物質、たんぱく質?、繊維質?などの構造に由来するのでしょう。
なぜなら、ロマネスコはカリフラワーとブロッコリーから「人為的」に作られた雑種らしいので、
黄金比に並ぶと太陽に効率的に当たる、云々はあまり関係あるとは思えません。
それよりも、構造そのものによる方がロマンチックな感じがするのですが、いかがでしょう?
構造そのものもまた、数式に従っているのはもちろんですから、どちらも同じといえば同じかもしれませんが、
いかん、また理屈っぽくなってしまった・・・)

さて、始めの写真の細胞たちの中心から、細長い膜状の構造が続いているのがみえますね。

皆さんならどう切り分けますか?

トゲトゲのクロレラ2 アカンソスフェラ Acanthosphaera [トレボウクシア藻]

前回によく似た、トゲトゲのクロレラ?のアカンソスフェラ(Acanthosphaera)さんです。
アカンソスフェラ.jpg
この方も報告が少ないので、写真のみのご紹介です。

前回のゴレンキニアさんより、トゲの根元がハッキリしているのが特徴のようです。

トゲトゲのクロレラ ゴレンキニア Golenkinia [トレボウクシア藻]

トゲが生えたクロレラ?さんのゴレンキニア(Golenkinia)さんです。
ゴレンキニア.jpg
たまたま写っていた写真なので見づらくてごめんなさい。

クロレラそのものも小さいのですが、こちらも負けず劣らず小さいですね。

数種いるようですが、報告も少ないので写真のみのご紹介でした。

手裏剣?撒菱? トレウバリア Treubaria [トレボウクシア藻]

今日は、手裏剣や、まきびしのような形をしたトレボウクシア藻、広義の緑藻?の仲間のご紹介です。

トレウバリア(Treubaria)さんです。
トレウバリア.jpg
三角だったり

トレウバリア2.jpg
四角だったり、もーっといっぱい(10以上)だったりします。

The Freshwater Algal Flora of the British Islesに下の様な分類がちょっとだけありました。

細胞は三角で辺が真っ直ぐか凸 T.schmidlei
細胞は辺が凹む
丸まった三角~球形で、粘液質の容器を欠く T.setigera
三角で、粘液質の容器に包まれる T.triappendiculata
となるようです。

特徴的な形をしていてさぞかしかわった生態をしているのかと数日あっちこっち探したのですが、
ほとんど記載がありませんでした。
Contribution à l`étude de Treubaria Bernard (Chlorococcales, Chlorophyceae). Candollea 35: 37-70.
がよさそうなのですが、残念ながら見つけられませんでした。
(英語でない可能性が大なので取り寄せても読めないかもしれません、但しSEM像はありそうです)
ちなみに、International Review of Hydrobiology Volume 94, Issue 1, pages 29–39, February 2009に、
Treubaria schmidleiのSEM像が1枚だけありました。

さて、有名なhttp://www.algaebase.org/によると、
さらに数種記載があり、そのうち1種には4鞭毛のある遊走子の時期があり動き回るとのことです。

突起のできかたも・・・細胞壁が突出するのでなく、細胞壁に新たに作られたものらしいです。
国立科博專報,(18),1985年t2月1日、によります。

すごく興味深い種類なのですが・・・ねぇ

本当に動けません。 オーキスティス Oocystis [トレボウクシア藻]

オーキスティス.jpg
オーキスティス(Oocystis)さんです。

鞭毛を持たないグループのトレボウクシア藻達に属していて原始的な側面を残している方たちですね。
代表的な方にクロレラさんがいますが、オーキスティスさんは通常4つの細胞を有しています。
ボルさんたちより少しだけ植物に近付いているのでしょうか。

実際、細胞たちを囲っている透明の膜には、
セルロースの微細繊維(cellulosic microfibrils)が存在し大分硬くなっているのでした。
J Cell Biol. 1978 Apr;77(1):103-19.によります。


緑藻綱 Chlorophyceae トレボウクシア藻綱 Trebouxiophyceae アオサ藻綱 Ulvophyceae プラシノ藻 Prasinophyceae ストレプト植物 Streptophyta
植物?全体からの系統樹は上のようになるでしょう。
Mol. Biol. Evol. 26(10):2317–2331. 2009.によります。

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